(2023.9.24 令和五年度 ばんえい競馬実施方針に基づき更新)
馬主の収支に直結するのが、毎月かかる経費と出走手当とのバランスです。
賞金を得ることができなかったとしても、出走手当によって、毎月の経費を賄うことができれば、長く馬主生活を続けることができます。
結論からいいますと、ばんえい競馬の場合、他の地方競馬と比べても、非常によいバランスとなっています。
目次
出走手当・その他手当
前提条件
ばんえい競馬の場合、外的要因が無い限り、年間で21~24走する馬が多く、月にすると、1.75回~2回出走します。
ばんえい競馬は土日月のセットを2回、2週間で1開催となっています。
1開催に1走することがほとんどですので、開催休止期間(3月末~4月下旬)以外は、月2回程度レースに出走します。
出走手当≒預託料に近くなります。
2歳馬(新馬) 出走手当
新馬限定戦 | 10万円 |
通常レース | 7万5千円 |
BG1(ばんえいのG1) | 10万円 |
月に2走した場合、14万円程度の手当となります。
3歳以上 出走手当
通常レース | 7万円 |
BG1(ばんえいのG1) | 10万円 |
ばんえい記念(最大のレース) | 25万円 |
月に2走した場合、13万円程度の手当となります。
その他手当
1開催で2走目の場合
頭数が増えているため、現在ではほとんど無いとのことですが、1開催中に2走目(連闘)した場合の出走手当は、2万5千円です。
着外手当
特別競走以上のレースの場合、着外手当があります。
特別競走(6着以下) | 1万2千円 |
準重賞競走 | 3万円 |
重賞競走 BG3 | 5万円 |
重賞競走 BG2 | 7万円 |
重賞競走 BG1 | 10万円 |
ばんえい記念 | 50万円 |
経費(預託料など)
月々にかかる経費(費用)になります。
代表的なのは、厩舎に支払う預託料(基本預託料+飼料など)、蹄鉄費、医療費となります。
預託料
預託料は、令和5年現在、月額14万円~15万円となります。
飼料の値上げなど、各厩舎も少し値上げを余儀なくされています。
それであっても、出走手当とのバランスが良いことがわかるかと思います。
また、維持経費(ランニングコスト)は、競馬場のきゅう舎に入るまでの育成牧場に対する預託費用や競馬場に入きゅうしてからの預託費用と考えられますが、前者については、一般的に月額8万円前後。後者については、調教師によって様々ですが、概ね月額12万円から13万円というところです。それ以外に、診療費、蹄鉄料などがかかります。
ばんえい競馬馬主協会 馬主の手引き(https://www.banei-owners.jp/%E3%81%94%E5%85%A5%E4%BC%9A/%E9%A6%AC%E4%B8%BB%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D-1/)
蹄鉄費・医療費
蹄鉄費は、蹄鉄を打つ場所が一箇所なので、基本1万8千円となります。
医療費は、馬によって様々ですので、一律幾らというものはありません。
他の地方競馬場との比較(令和3年度基準)
他の地方競馬場(サラブレッド)と比較し、ばんえい競馬がお得かどうかを調べました。
結論としては、どこの地方競馬場よりも収支的に安定していると言えます。
比較対象・及び条件
①比較対象
比較対象の競馬場は、佐賀競馬場とします。
理由としては、同様の賞金水準の金沢・名古屋に比べて、出走手当と預託料のバランスが良いからです。
②条件
収支のOUTとしては、預託料(飼料込)・医療費・蹄鉄費とします。
INとしては、出走手当と賞金とします。
クラスは最も低いクラスで、賞金0として比較をします。
2歳時はデビュー時期の関係などで、基本的に年間赤字になることから、3歳以降を想定しています。
月額費用比較(月2回出走)
①条件
サラブレッドで、コンスタントに月2回出走はなかなか難しいかもしれません。
佐賀競馬所属の馬は、休養を除くとできる限り、月2回出走をしているようですので、出走回数を2回にして比較します。
蹄鉄費は実際のデータから月1万5千円としています。
医療費は馬によってまちまちですので、月2万円と仮置きします。
②月額収支 比較表 預託料と出走手当のバランス
項目 | 品目 | ばんえい | 佐賀 |
支出 | 預託料 | 13万円 | 15万円 |
支出 | 蹄鉄費 | 1万5千円 | 1万5千円 |
支出 | 医療費 | 2万円 | 2万円 |
収入 | 出走手当 | 13万円 | 15万2千円 |
収入 | 賞金 | 0 | 0 |
合計 | -3万5千円 | -3万3千円 |
どちらの競馬場も、月2回出走の場合は、預託料とほぼ同額であり、蹄鉄費や医療費分の出費がある形です。
年間費用
①条件
ランダムに複数頭の年間出走回数を調べました。
ばんえい競馬は、年間21~24走であり、佐賀競馬は年間15走でした。
ここでは、ばんえい競馬の年間出走数を21とし、佐賀競馬を15として計算します。
②年間収支 比較表 預託料と出走手当のバランス
項目 | 品目 | ばんえい | 佐賀 |
支出 | 預託料 | 156万円 | 180万円 |
支出 | 蹄鉄費 | 18万円 | 18万円 |
支出 | 医療費 | 24万円 | 24万円 |
収入 | 出走手当 | 136万5千円 | 114万円 |
収入 | 賞金 | 0 | 0 |
合計 | -61万5千円 | -108万円 |
賞金0の場合、どちらも赤字になります。
出走回数の違いにより、年間収支に差が出ました。
賞金・年間収支
佐賀競馬のデータが取れなかったため、ばんえい競馬のみで考えます。
賞金は、獲得賞金の8割として計算します(実際の手取り賞金)
3の内容から考えると、手取りで60万程度あれば、収支がプラスマイナス0になることになります。
順位 | 賞金(手取り賞金) | 占める割合 |
1~5 | 400万以上 | 1% |
6~25 | 200万以上 | 3% |
26~45 | 150万以上 | 4% |
41~105 | 100万以上 | 12% |
91~255 | 60万以上 | 32% |
256~500 | 60万以下 | 48% |
上記の表は、年間の賞金(手取り)の頭数表です。
全頭500頭です。
52%の馬で黒字、48%の馬で赤字になる計算です。
総費用・収支
1歳の新馬を、その年の適正価格で購入したとします。
馬代金及びデビューまでの費用を回収できるかの損益分岐点は、計算上、150万ぐらいの黒字になった場合です。
(新馬価格+牧場代ー引退時精算)
結論
馬代金や初期費用をすべて回収して黒字:約12%
年間収支黒字:約45%
年間収支赤字:約55%
3ー②で出てきた年間約62万を経費として考え、獲得賞金(手取り)から引きます。
購入費用+デビュー~引退までの総費用が黒字になる割合を計算しました。
計算式は、「(総手取ー62万)×(年齢-1)」です。
また、 公式のホームページに掲載されている獲得賞金は、「番組賞金」となっており、以下の計算式で成り立っています。
「過去3年間の獲得賞金+本年度獲得賞金」(細かい条件は省く)
つまり、6歳以上になると、段々と過去の賞金が計算外になっていくということになります。
6歳だと、2歳時の賞金が削除、7歳だと2,3歳時の賞金が削除・・・
今回の計算では、6歳以上現役を続けている馬は、少なくても過去に年間赤字になっていないと仮定して表を作成しています
(6歳だと2歳時の賞金は削除されているため、獲得賞金が少なくなっているが、削除された期間は獲得賞金=経費だったとし(プラスマイナスゼロ)、計算しています)
そのため、実際には、下記の表よりも手取り賞金は多く、黒字の割合が高い可能性があります。
頭数(496頭) | 賞金(手取り賞金) | 占める割合 |
6 | 1000万以上 | 1.2% |
5 | 500万~999万 | 1.0% |
18 | 300万~499万 | 3.6% |
18 | 200万~299万 | 3.6% |
37 | 100万~199万 | 7.5% |
138 | 0~99万 | 27.8% |
230 | ~マイナス99万 | 46.4% |
41 | マイナス100万~マイナス199万 | 8.3% |
3 | マイナス200万~ | 0.6% |
馬代金及びデビューまでの費用を全部含めて黒字になるのは、約12%でした。
年間収支黒字は、約33%程度が黒字です(育成費+年間の経費をペイ)
赤字の場合も、ほとんどの場合、軽微な赤字になっています。
初期費用・馬代金もすべて回収 | 12% |
黒字(ただし馬代金は回収できず) | 33% |
軽微な赤字 | 46% |
月数万の赤字 | 9% |
万が一のときの補償(弔慰金制度)
サラブレッドの馬主をされている方であれば、競走馬保険について、ばんえい競馬にはないのか?と疑問に持たれるかもしれません。
ばんえい競馬には、競走馬保険は存在しませんが、その理由と代わりとなる弔慰金制度についてまとめています。
馬代金がサラブレッドとばん馬では違うという点はありますが、競走馬保険よりも手厚い制度になっています。
馬主収支シミュレーション
馬を持った場合、どれぐらいのマイナスを見込めばいいのか、プラスではどれぐらいまで夢を見ることができるのかをシミュレーションしています。
ばんえい競馬は、サラブレットに比べて、ローリスク・ローリターンになりますが、実際の金額を見ながら、馬主生活について想像してみてください。